関東財務局のヒアリングから見えてきた課題とは?
銀行も保険代理店業を行っていますが、業界に関係する大きな動きが2つありました。
1つは、関東財務局が2019年秋から2020年にかけてヒアリングをした61の代理店に対する「公評」で、2020年6月19日に関東財務局のホームページ(http://kantou.mof.go.jp/kinyuu/pagekthp029000012.html)にアップされました。皆さまも当然熟読されたと思いますが、テーマ自体も「保険代理店との対話を通じて『見て、聞いて、感じた』こと。」というもので、なかなか斬新でした。
ヒアリングをした61の代理店のうち、生保代理店が39、損保代理店22、保険専業代理店47、兼業14という状況でした。規模も保険募集人数10名~30名という代理店が25と、半数近くになっています。本気で保険代理店の声を直接聞きに行ったことが、これらの数値で読み取ることができます。
今回のヒアリングは、保険業法改正から3年経過した今、PDCAサイクルの「C」がいかに機能しているかチェックするのが主な目的でした。
関東財務局のヒアリングによって、PDCAサイクルの「C」と「D」の不徹底が明らかになった
結果は「法令等に基づく保険募集のルールの本質をしっかり理解していない」ことから、改正保険業法後の環境変化に対応した改善等が図られていないとして、「C」及び「D」の不徹底を指摘した形となっています。
保険代理店の本質は何か?
本報告書の中で「本質」についての言及がありました。本質とは「常にお客さまのために出来ること、必要なことは何なのかなどという顧客本位の視点を持って考えることだ」と明記されました。
銀行の保険代理店で「本質」を理解しているところがあるのでしょうか。本質を理解していないからこそ、多くの苦情が寄せられているのです。そもそも「苦情は1件もあれば不適」です。もう一度「顧客本位の本質」を考え直す必要があると思います。
保険各社が求める業務品質にはバラツキが目立つ
そして、もう1つが生命保険協会による「代理店業務品質のあり方等に関するスタディーグループ」が2020年6月からようやく機能し始めたことです。4月からスタートしていますが新型コロナの影響で実際の開催が遅れ、6月から毎月1回開催で意見をまとめることになります。
現在、乗合代理店が、保険会社から求められる業務品質は各社でバラツキが生じています。保険会社が求める業務品質の「項目数」だけ見ても、6項目を求める所が6社と最も多く、何と0項目が1社、50項目が1社あるなど異常なバラツキとなっています。
保険会社が乗合代理店に求める業務品質は、各社によってバラツキが目立つ
しかも、この項目が保険会社ごとに異なります。共通して26社が導入している項目が「継続率」で、23社が導入している項目が「FD方針の策定・公表」で、1社のみ導入の項目に至っては33もあり(生命保険協会「代理店業務品質のあり方等に関するスタディーグループ」ホームページ記載文章から)(https://www.seiho.or.jp/data/billboard/agencyqualitysg/)、これでは求められる保険代理店も保険会社ごとに対応する必要があり大変ですよね。
生保協会で統一した業務品質に基づき体制を整備
これを機に生命保険協会では、業務品質を統一しようという展開に入りました。しかも、金融庁からは「お客さまから見てもわかりやすい業務品質」にするよう指示が出ています。新たに導入される業務品質の種類や数はこれから決まりますが、乗合代理店は発表された内容に基づき体制を整備する必要に迫られます。
「顧客本位」を徹底しないと銀行の保険代理業に未来はない
銀行の保険代理店も「乗合」代理店になります。スタディーグループには13の乗合代理店が委員として選ばれていますが、銀行の代理店は選ばれていませんので、ミーティングのたびに生命保険協会のホームページにアップされる議事内容をチェックし、素早い対応をされることをお勧めします。
「常にお客さまのために出来ること、必要なことは何なのかなどという顧客本位の視点を持って考える」という、銀行に欠落している考え方をもう一度考え直さないと保険代理店業もできなくなりますよ。