ウェブ経由での集客が伸びる。進む保険販売のデジタル化
飲食店の営業や県境をまたいでの移動自粛の影響もあり、2020年4-6月期のGDPは-27.8%と大きく落ち込みました。経済的には、大きな影響を与えたコロナですが、働き方やビジネス慣行の見直しなどの社会構造改革の面からはポジティブな面もあります。緊急事態宣言後、在宅勤務などのリモートワーク・テレワークは急速に進み、業務指示や社内会議、研修などからスタートし、実効性に懐疑的であったオールド世代も巻き込みながら、顧客とのリモート面談や商談へ順次拡大し日常の一部として定着しつつあります。
保険業界においても、大手を含めた9社・グループの4-6月の新契約年換算保険料は、対面販売の自粛などの影響を受け、前年比6割の大幅な減少となりました(8月18日、日本経済新聞)。一方、ウェブ面接や大手生保でもネット経由での非対面販売を開始するなど、コロナにより加速されたデジタル化に合わせて、伝統的な対面によるニーズ喚起、保険販売、フォローアップなどにも変化が見られます。
「保険市場」を運営するアドバンスクリエイトと「保険クリニック」を運営するアイリックコーポレーションが、相次いでIR情報を発信しました。アドバンスクリエイトでは、月当り概ね7,000件の面談が実施されてきました。緊急事態宣言後の4、5月の総アポイント数に大きな変化はありませんが、そのうち7割がウェブ経由となり、6月の緊急事態宣言解除以降は、総アポイント数もコロナ前の2~3割増しとなっています。アイリックコーポレーションのウェブ経由の集客も4、5月は前年の2~3割減となりましたが、6月には前年を上回り、7、8月には3割増と大きく伸びています(図1、図2参照)。

出所:株式会社アドバンスクリエイト社IR資料「2020年8月度の当社の業績について」より抜粋

出所:株式会社アイリックコーポレーション社IRニュース『保険クリニック』新規総来店数、集客数、web集客数のお知らせ(2020年9月14日発表)より抜粋
カウンセラーであり、サポーターであり、コーチであれ
リモートワークの普及により顧客もリモート面談に慣れ、販売側も様々な工夫を凝らしより円滑なリモート面談に努めたことなどもありますが、根底には、コロナという未知の感染症が急速に広まる中で、顧客があらためて健康管理やライフプランに向き合い、病気やケガはもちろん、介護や年金など老後生活も含めて、様々なリスクについてじっくりと考えるようになったことが、ウェブ経由での保険相談や申し込みが増加した要因のように思います。人生の様々なリスクを管理するツールとして、生命保険の持つ保障・金融機能があらためて見直され、商品販売を中心とした生命保険の伝統的なビジネスモデルが転機を迎えているようにも感じます。
ポストコロナ時代の保険相談、生命保険販売には、これまでの保険や関連情報に精通した専門家(コンサルタント、プランナー)としての役割に加えて、顧客の声に耳を傾け、課題を整理するカウンセラーとしての役割、また夢や人生目標の実現に向けたサポーター、コーチとしての役割が求められます。対面、非対面にかかわらず、デジタル機能を活用し分かり易い情報伝達に努めるとともに、顧客と長期にわたるパートナーシップを築き上げて行くことが益々重要になっていくのではないでしょうか。
