法改正で大きく変わる? 金融サービスをワンストップで提供
新型コロナの感染が小康状態にあった2020年6月5日、いわゆる「金融サービス仲介業」の創設を含んだ「金融サービスの利用者の利便の向上および保護を図るための金融商品の販売等に関する法律の一部を改正する法律」(以下、改正法)が成立しました。今後、政省令を詰め2022年にもその施行が予想されています。
改正法の目的は、ICT(情報通信技術)やキャッシュレス化の一層の進展が予想される中、①決済関係法令の整備を行うとともに(決済法制の見直し)、②預金、貸出、証券、保険等、これまでの金融商品ごとのサービスをワンストップで提供することを可能とし(金融サービス仲介業の創設)、利用者(顧客)の利便性の向上を図ることにあります。
「金融サービス仲介業」の創設により、金融商品の提供者である金融機関とこれを販売する代理店や金融機関の関係に二つの変革が起こります。
- ① 金融サービス仲介業者として登録することにより、一部の高度な専門知識を要する商品(例えば変額性の保険や年金、外貨建ての保険や年金)を除き、個別の販売資格が必要であった銀行、証券、保険等の金融商品を包括的に取り扱うことができます。
- ② これまでは商品提供する金融機関の管理の下、代理人として金融商品の販売を行っていましたが、金融サービス仲介業者は金融機関から独立して金融商品を「仲介」することになります。例えば、保険募集人は、保険会社の監督の下、保険会社の代理人として保険会社のために保険を販売してきましたが、金融サービス仲介業者は、顧客に最適な商品を選択し、ビジネスパートナーである保険会社(あるいは販売代理店)に仲介することとなります。

顧客への包括的なソルーションが求められる時代へ
改正法により、フィンテック系、流通、通信等、他業態からの参入が促進され、商品開発、顧客サービスの向上、さらには金融事業全般の活性化が期待される一方、これまで保険、年金、投信等の販売を担ってきた代理店や金融機関にとっては、デジタルサービスを駆使して包括的に金融商品を提供(仲介)する新規参入者は脅威となるかもしれません。
一方、「金融サービス仲介」は、金融サービス利用者(顧客)と金融機関の関わり方にも変革をもたらし「顧客本位の業務運営」を加速させると期待されます。金融機関に求められるのは、金融商品の単発的な販売や金融商品知識の切り売りではなく、個別の事情を理解し包括的でまた具体的なアドバイスであり、ソルーションです。
対面の利点を生かすことにより、顧客と強い信頼関係を構築し中長期にわたるライフプラニング支援と最適なソルーションをワンストップで提供することが可能になります。統廃合が続いている金融機関の支店も、地元に根付いた情報発信またライフプラニング支援の地域のハブとしての新しい役割も期待されます。
「金融サービス仲介」は、金融業務に求められる人材の姿を変えるターニングポイントに繋がるかもしれません。地域に密着し、幅広い知識と高いコミュニケーションスキルをもって、多様な商品群の中から各ライフステージにおいて最適なソルーションを推奨できる新しい金融商品担当者の活躍を期待しています。
