コメント (0)
人口減少や高齢化の進展とともに、経済の縮小や衰退が懸念される地域が増えています。地域経済を活性化させるためには、どのような取り組みが効果的でしょうか。そして地元の金融機関が果たすべき役割とは?中央大学客員講師の上野直昭氏が保険窓販を切り口とした地域創生のヒントを提案します。

コインランドリーの待ち時間に保険相談

新潟県の燕三条駅付近を散策していると保険ショップの路面店がありました。通り自体は地方でありがちな複数の外食に、複数のアパレルなど何でも揃っている通りですが、保険ショップと同じ建物には「コインランドリー」と「ヘアカラー専門店」が入っていました。

コインランドリーは雪国ですから冬は洗濯物が乾きにくいので老若男女問わず来店されると思いますし、ヘアカラー専門店には女性が立ち寄られると思います。同じ建物の並びに保険ショップがあればコインランドリーで服が乾くまでの間に保険相談したいという動きに自然と繋がりますよね。

服が乾くまでの時間を使って保険の相談をすることもできる

建物の前には「フィットネスクラブ」が入っていて健康に意識の高い方=保険ニーズも顕在化している方が多いと思いますので、保険に繋がる可能性は高いと思います。

誰が組み立てたのか知りませんが、良く出来ていると思いました。こうして複数の店舗が相互に送客し合うという構図は、テッパンで集客に役立つと思います。

美容院⇒調剤薬局⇒レストランという顧客動線

相互送客で今取り組んでいるのが美容院です。美容院は全国に24万店もあり、しかも1人のお客さまと長く付き合う職業でもあります。一つの美容院の顧客数は800名と言われていて、800人が美容院で月400万円を使ってくれるそうです。

では、この800名が美容・健康以外の生活関連でいくら使っているかご存知ですか。何と月4億円と言われています。この4億円を色々な業態の方々が相互送客で分け合えれば言うことありませんよね。

この相互送客を構築するために美容院で、「カットした髪の毛から栄養素をチェック」するというサービスがあります。髪の毛は1カ月で1㎝伸びます。ロングヘアの方で毛根から30㎝の髪は30カ月前にできたもので、その時の生活習慣で不足している栄養素などがわかります。

不足している栄養素が仮にミネラルとすると、それを補充するために何を食べたら良いかを近くの調剤薬局で管理栄養士に相談しに行くと教えてもらえます。さらに近くのレストランでこの料理を食べたらミネラルが補充できると教えてもらえば、そこに行きますよね。料理に使う野菜も無農薬で近くの契約農家から仕入れれば地域でお客さまが巡回し、それぞれでお金を落としてくれます。

美容院で不足している栄養素を特定し、近くのレストランで摂取するという顧客動線が生まれる

こうして「相互送客を色々な業態と組む」ことにより、地域内で人が行き来する構図を作ることができます。ここに地域のポイント制度や地域マネーと組めればより効果があると思います。

箱としての存在感を高め、相互送客の仕組みを構築

こうした構図を作る仕事って、銀行がすべきではないでしょうか。
銀行は地方の顔の一つです。地元企業や農家等々と提携して、こうした流れを作ることは難しいことではないと思います。回り回って最後にお客さまは銀行に何らかの貢献をしてくれると思います。

大和証券とコメダがコラボしたコメダ珈琲店がオープンしたというニュースをみました。店内にディスプレーやタブレット端末、書籍を置き、金融市場の情報を提供し、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」の関連情報も発信するそうです。

銀行が「相互送客」の仕組みを作るには、支店に特徴を持たせることが肝心

銀行も、まずは支店に何か特徴を持たせて「箱」としての存在感を高め、ここから「相互送客」できる仕組みを発信して行けば、金融庁から褒められると思います。ぜひトライしてみませんか。いつでもご相談に乗りますよ。

  • 上野直昭(うえの・なおあき)

    中央大学 経済学部 客員講師
    一般社団法人 保険健全化推進機構 結心会 会長

    日本火災海上保険(現損保ジャパン日本興亜)に入社後、損保マンとして経歴を重ね、2005年3月株式会社保険市場取締役就任し全国に保険ショップ保険市場を展開。その後、保険市場ショップを譲受した全国の保険代理店を組織化し一般社団法人保険健全化推進機構結心会を設立。保険ショップ定着を指導するなど保険販売の現場で幅広く活躍。

コメントを書く