投資信託の販売現場では商品知識や数字の理解は重要ですが、それをどのようにお客様に伝えるかという営業スキルの教育機会は意外に限られています。本連載では、商品開発や販売の経験が豊富な大和アセットマネジメントの浜田好浩氏が、1,000本超の投信開発の知見を基に、どんなタイプの販売員でも成果につなげられる「お客様に刺さる提案の極意」を解説します。(『ファンドマーケティングvol.85』2026年10月13日発行号より転載)
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金融知識でも防げない心理の罠
若い頃、先輩ファンドマネージャーに言われた忘れられない言葉があります。それは「素人は相場が上がったら天まで上がると考え、下がり始めたら深海まで下がると思ってしまうものだ」。30年以上マーケットに触れていると本当にそうだなあと感じます。
内外株式は時に大きく下落しました。ブラックマンデー(1987年)、日本バブル経済崩壊(1989年~)、ITバブル崩壊(2000年~)、リーマンショック(2008年)など枚挙にいとまがありません。しかも遠い昔の話に限りません。新NI SA(少額投資非課税制度)が始まって2年半が経ちましたが、その間でさえ、令和のブラックマンデー(2024年8月)、トランプ関税ショック(2025年4月)、米イラン紛争(2026年3月)などがありました。そのたびに販売員の皆様にはお客様から慌てふためいた声が数多く寄せられたことと思います。
こうしたショックに際して、投資家は長期的な視点を見失い、非合理的な判断を下しやすくなります。知識不足ではなく、心理的バイアスが原因と見る理論(行動ファイナンス理論)があります。
「プロスペクト理論」によれば、人間は「利益から得る喜び」よりも「同額の損失から受ける痛み」を約2倍も強く感じます。含み損の痛みに耐えかねた投資家が、本来なら売るべきではない「相場の底」で資産をすべて売却(狼狽売り)してしまうのはこのためです。
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