米国では、商品や相場の魅力を伝えて取引につなげる営業から、顧客とその家族の人生の目標に寄り添い、長期的に資産を管理する営業へと転換が進んできました。その実像を理解するうえで重要なのが、対面アドバイザーが担う「ゴールベース資産管理」です。米国の金融機関を30年以上にわたり調査してきたNRIアメリカの金融・IT研究部門長である吉永高士氏の知見から、顧客のゴールを引き出す対話や継続的な関係づくりなど、これからの投信販売員に必要となる実践のヒントを探ります。
(『ファンドマーケティングvol.85』2026年10月13日発行号より転載)
相場下落局面で顧客離れを抑えた「フィーベース」事業モデル
(NRIアメリカ)
金融・IT研究部門長
米国のアドバイザー営業を理解するうえで、まず押さえておきたいのが、「ゴールベースアプローチ」と「ゴールベース資産管理」の違いです(図表1)。
「ゴールベースアプローチ」は、顧客が設定した目標に応じて資産運用を行う考え方を広く指し、ロボアドバイザーやネット証券を利用したセルフプランニングも含まれます。一方、「ゴールベース資産管理」(Goals-based Wealth Management:GBWM)では、対面アドバイザーであるウェルス・マネジャーの存在が欠かせません。顧客本人だけでなく、配偶者や子、孫、曾孫、親など家族について継続的に話を聞き、そのなかでゴール設定をアップデートし、進捗を確認していくことが核となります。
ゴールベース資産管理の原型が米国で広がり始めたのは、1990年代半ばです。その実行手段として使われたのが、顧客の資産を一括して管理・運用する「ラップ」です。ラップ自体は1975年に登場していましたが、当初20年は顧客のゴールを踏まえず、ラップという商品・サービスそのものを提案するかたちだったため、十分には普及しませんでした。変化をもたらしたのは、預かり資産の残高などに応じて継続的に手数料を受け取る「フィーベース」事業モデルのもとで、顧客のゴールに沿った中長期分散投資を行うアドバイザーの存在です。
2000年前後のハイテク株バブル崩壊では、商品を売買するたびに手数料を得る「コミッション型」の営業で顧客を失うアドバイザーが相次いだ一方、フィーベースで継続的な関係を築いていたアドバイザーでは顧客離れが極めて限定的でした。これを受け、2000年代初頭から大手証券会社が組織的にフィーベースによる対面主体のゴールベース資産管理の研修を体系化し、その後、中堅・地場証券、独立系、銀行、保険会社などへ広がりました。
出所:NRIアメリカ2026年現在、米国には約29万人の対面アドバイザーがおり、全体では預かり資産の4割弱、先行する大手証券会社では約5割がラップで運用されています。これが投資商品販売収益の約8割を生み、顧客とその家族のゴール実現と資産増大とともに、預かり資産と収益の右肩上がり成長を牽引しています。
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