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東京の金融業界が力を合わせ、地域社会の非営利団体を支援――。17回目を迎えたFinancial Industry in Tokyo(以下、FIT)チャリティ・ランが、2021年11月1日~30日のスケジュールで開催されている。種目はランニング・ウォーキング・サイクリングの3つ。新型コロナウイルス禍においてさらに支援が必要とされるなか、2021年もオンライン開催を決定した。参加費を払えば自由な場所で汗を流し、その結果をFIT専用アプリで記録できる。FITチャリティ・ラン実行委員会では、「地方の金融サービスおよび関連ビジネスの関係者も、ご家族やご友人と楽しみながら参加してほしい」と呼びかける。

2020年までの16年間の寄付総額は約9億円

FITチャリティ・ランがスタートしたのは2005年だ。2004年スマトラ沖大地震およびインド洋大津波被害を機に金融機関の有志が集まり実行委員会が発足した。年々参加企業は増加し、今では金融機関とコンサルティング会社や法律事務所、金融情報ベンダー、サービスプロバイダーなど多くの関連企業が参画。2020年までの16年間の寄付金総額は約9億円に達した。FITは社会的な意義や必要性が十分に認知されていない非営利団体への寄付を通じて社会貢献に努めている。これまでに支援した団体数は延べ123団体で、毎年新しい団体を選定している。

約5000人のランナーが走り出す様子(2019年の10kmラン)

約5000人のランナーが走り出す様子(2019年の10kmラン)

「FITチャリティ・ランは有志が集まり一体感をつくることが参加意義の1つだったが、コロナ禍の影響で多くの人々が集まるイベントを開催することが難しくなった。しかし、非正規労働者など社会的弱者を取り巻く環境は悪化の一途をたどっており、NPO(非営利組織)団体では支援活動の自粛などもあり財務状況が悪化しているため、コロナ禍においてこそ支援の必要性が以前よりも増しているといえる。そこで2020年から安全に参加できるオンライン開催に移行し、継続して活動を行い、支援を続けている。FIT2021のテーマは『持続と共生』だ。FITを通じて地域社会の課題に取り組む方々や、その先にいる裨益者との共生を形にする」(FITチャリティ・ラン実行委員会)

FIT2021専用アプリを活用

専用アプリで日本全国、海外からも参加できる

オンライン型のFITチャリティ・ランは、東京に本支店を持つFIT2021の参加企業の国内外の本支店、子会社などの従業員とその家族、友人であれば誰でも参加できる。種目はランニング・ウォーキング・サイクリングの3つある。走行距離や時間は各個人で決定し、累積距離の記録を投稿して参加者同士で共有。FacebookやTwitterなどSNSでも連携可能だ。「2019年までは現地(東京都の明治神宮外苑)に当日集まれる人しか参加できなかったが、2020年のオンライン開催では、北は北海道から南は沖縄まで、さらにシンガポールや香港、中国、ロンドン、ドイツ、イタリア、オーストリア、米国など国内外各地より75社・2566名の参加者が集まった」(同委員会)

ボランティアによる給水サポート(過去の実開催時)

ボランティアによる給水サポート(過去の実開催時)

寄付先団体は実行委、各スポンサー・サポート企業が選定

日本のNPO団体に対する助成金の相場は、1件あたり数十万円から多くても200万~300万円だという。FITの場合は平均500万~600万円と比較的寄付金額が大きく、「事務経費には適用されない」といった助成財団によくある使途制限をあまり設けていないのが特徴だ。FITの支援は非営利団体の中で一定の認証機能を発揮しており、FITの支援を受けた団体は別の助成金に適用されやすくなるといった効果も出ているという。

FITの支援対象の選定は金融業界全体で行う。具体的には、イベント開催年のスポンサーと前年のスポンサーから推薦された候補団体をFIT実行委員会がガイドラインに沿って精査し、条件をクリアした団体の中から、各スポンサー企業が投票して寄付先団体を決定する。この選定プロセスは、より多くの企業が積極的に支援先について考え、参画企業の社員がこうした活動に触れる機会を作ることが狙いだ。そのほか、実行委員会のメンバーと支援先団体の交流イベント、スポンサー企業の代表者と支援先団体の代表者が交流する「CEOセッション」を設けるなど、企業と支援先団体をつなげる工夫も行っている。そこから新たな支援が始まるといった好循環も生まれている。

FITチャリティ・ラン2021実行委員会のメンバー

FITチャリティ・ラン2021実行委員会のメンバー

一般的に、大手NPOやNGO(非政府組織)に寄付をすると3~4割が管理費に充てられる。また、クラウドファンディングを含めたファンドレイザーも、2割、場合によってはそれ以上を手数料として引くのが常識だが、FITの経費率は約10%と低い。オンライン開催用アプリ開発や参加者に配布されるTシャツ制作など、FITチャリティ・ランの開催に必要な物品やサービスが、多くの協力企業・個人によって非常に廉価あるいは無償で提供されていることが経費抑制に貢献している。また、イベント自体がすべてボランティアで運営されていることも低い経費率を実現している要因だ。

「FITの参加費は1人5000円、スポンサー企業からの協賛金は1社あたり50万円からで、寄付総額はコロナ前では例年5000万~6000万円の水準だった。オンライン開催で参加者は減ったが、それでも2020年は5団体に対して、それぞれ500万円以上を寄付できた。たくさんの方が参画されることで多くの金額が集まり、様々な社会課題の解決につながっていく。地方の方もぜひ、ご家族やご友人と楽しみながらFITに参加いただけたら嬉しい」(同委員会)。FIT2021の参加企業であれば、参加申し込みは11月30日のイベント終了まで可能。参加希望者は各社のFIT担当窓口まで。

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