独自開発のAIが企業の変化の兆しをキャッチ
──『三井住友DS日本バリュー株ファンド』(愛称:黒潮)の特徴を教えてください。
『黒潮』は、正式名の通り国内のバリュー株(割安株)に投資するアクティブファンドです。ポイントは、ただ単に割安な株に投資するのではなく、“大きな変化”が期待される銘柄に投資することです。バリュー株投資というと、PBR(株価純資産倍率)1倍割れで買い、1倍以上になったら売却するのが一般的ですが、中にはいつまでも割安なまま放置される「バリュートラップ」にはまり、株価が上昇しないケースも見受けられます。
また、割安な株価が見直されるだけではリターンは限定的です。当ファンドはPBRだけでなく、ROE(自己資本利益率)の変化に注目して銘柄を厳選します。割安株の中から業績改善などにより、ROEの改善が見込まれる銘柄を厳選することで、α(市場平均を上回るリターン)の獲得を目指します。
──PBRとROEの関係を教えてください。
ROEとは、株主から預かった自己資本を使って、どれだけ効率的に利益を生んでいるかを示す指標です。ROEの数値が高いほど企業が効率的に利益を得られる体質であると判断され、将来の利益が増加すると期待されます。
そしてPBRは「PBR=ROE×PER(株価収益率)」なので、ROE、PERが上がれば、PBRは上昇することになります。PERが需給や市場心理など外部環境に左右される側面がある一方で、ROEは業績拡大やコスト削減、株主還元といった企業努力により向上させることが可能です。
『黒潮』は、ROEを考慮して適正と思われるPBRを独自に算出し、それを下回る銘柄を主な投資対象としています。投資時点のPBRから適正値に上昇することで期待リターンが高まりますし、ROEが向上すればさらに適正PBRが上昇して、より高いリターンが見込めるのです(図表1)。
──ROEの向上の可能性はどのように判断していますか。
企業の変化は数値に現れない部分が多いため正確に捉えるのは難しい。そこで『黒潮』では、企業リサーチをサポートする独自のAI(人工知能)を開発し、“変化の兆し”を可視化する仕組みをつくりました。
具体的にはファンドマネージャーである私の考え方を学習させたAIに、全上場企業が発表している決算短信のテキストを読み込ませてスコアリングしています。例えば、「新商品が好調だ」「新技術を開発中」といった前向きな変化が見て取れるコメントがある場合には高スコアが付くといった具合です。
その後、AIでの評価スコアで上位となった企業を運用チームが重点的にリサーチします。業界や同業他社を分析するほか、経営者に直接インタビューしたり、オフィスや工場を視察したりして確度を高めていきます。
企業の取組みは一朝一夕には業績改善につながりません。継続的な企業変化をもたらすにはトップマネジメントがカギになるので、経営層との面談を重視しています。
インデックスを上回る収益を狙う
──今後の見通しは。
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