コロナ期も、それ以降も、金融機関の不良債権比率は低下

インド経済の発展を読み解く上で押さえておくべきメインストーリーについて、瀬上氏は「中間層の増加による消費の拡大」を強調しました。新興国の多くは、世界銀行が分類する「国民1人当たりのGDP(国内総生産)が1万米ドル=中所得国」までは成長できるものの、その後は成長が鈍化して「高所得国」の仲間入りを果たせずにいる傾向があります。いわゆる「新興国(中所得国)の罠」です。

BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)のうち、2023年の1人当たりの名目GDPは、中国は1万2514米ドル、ブラジルは1万642米ドルでした。この2カ国は、中所得国の罠に陥っていると言われています。

一方でインドは2500米ドルでした。よく引き合いに出されるタイは7000米ドル、インドネシアは4800米ドルであったことから、インドは低い水準にあることが分かります。また、低~中間所得者層が2020年時点で9割以上を占めています。「このことから、他の新興国と比べてまだまだ成長の余地が大きいと言えます」と瀬上氏は説明します。

インドと日本の一人当たりの名目GDP

インドでは、賃金の上昇や中間層の拡大を背景に、個人消費は活発化しています。住宅ローンや自動車ローンなど個人向け信用残高が右肩上がりで拡大傾向にあることに対して、金融機関の不良債権問題が浮上するのではと懸念される方もいるでしょう。瀬上氏は「実はインドでは、新型コロナウイルス期でも不良債権比率が低下し続けました」と明かします。

所得世帯数の推移

2015年以降に積極的な不良債権処理や大きな税制改革、高額紙幣の廃止など痛みを伴う改革を行ったインドでは、2016~2018年に一時的に不良債権比率が高まりました。しかし、法整備や銀行の改革、インフラプロジェクトの加速などに伴って経済に好循環が生まれ、不良債権比率は大きく低下したのです。改革が実を結んで2019年以降は下がり続け、健全な水準を維持しています。

セミナーの様子参加者からも好評な瀬上氏の「インド出張報告」による実体験を交えた解説

また、コロナ対応のための財政出動はあったものの、デジタル化の推進で効率性が高まった結果、経済の急回復や税収の増加により財政赤字の比率は右肩下がりで低下しています。インフラ投資額も増えていますが、税収の増加分でしっかりとカバーできている状況です。

「インド株式市場は最高値の更新を続けていますが、インド企業の利益は今後2桁を大きく超える成長が続くと見込まれており、予想PER(株価収益率)の推移を見ても割高感はない水準にあります」(瀬上氏)

セミナー参加者の声

●インド株上昇、今後の見通しについての裏付けがとても分かりやすかった。既存顧客は米株に偏っているのでインドの魅力を伝え販売に活かしたい。アピールポイントに対する回答例が分かりやすかった。

●具体的な企業について、実体験を踏まえて話をしていただき、イメージがわきやすかったです。中間所得層の増加がインドの今後の経済のポイントとなることが、現地の方も重要と考えていることを知り、インドの成長が確信に変わりました。

●インドサイドからの発信なので、今までインド関連の投資セミナーでは出てこない切り口の話があり、対顧客への話題に使えると思われたこと。今回の選挙結果を受けた詳しい話も興味深かった。中国との比較した活かし方はわかりやすかった。

関連記事

関連記事はありません。

コメントを書く