大和アセットマネジメントは2024年6月に「インドマーケットセミナーinインド大使館」を開催しました。インド株式の投資環境見通しやインド経済状況を解説したプログラムの中から、講演の一部を紹介します。

8年連続で上昇しているインド株式市場

駐日インド共和国特命全権大使 シビ・ジョージ氏
駐日インド共和国特命全権大使
シビ・ジョージ

第一部に登壇したのは、日印ビジネスに25年近く携わっている駐日インド共和国特命全権大使のシビ・ジョージ氏です。

ジョージ氏は、「日印関係において、経済的共生やサプライチェーンの混乱などというものは存在せず、両国には友好の歴史だけがあります。現在インドに進出している日本企業は1500社ですが、数年後には1万5000社に達すると確信しています。例えば、インドの自動車業界の市場シェア率の40%を占めているのは、日本のスズキです。数年前は約50%のシェア率でしたが、市場の拡大に生産が追い付かず一時的にシェア率が下がっています。しかしスズキはインドに新たに2つの工場を建設し、毎年100万台以上の自動車の生産を見込んでおり、いずれシェア率は50%を超えるまで回復するでしょう。このように、インドに進出している企業の数だけ成長ストーリーが予想できます。日印関係をさらに前進させることで、モビリティや投資、半導体、観光、人材の交流など幅広い分野で互いに発展していけるでしょう」と期待を寄せました。

金 春愛氏
大和アセットマネジメント
調査部
シニア・エコノミスト
兼シニア・ストラテジスト
金 春愛

第二部では、大和アセットマネジメント 調査部 シニア・エコノミスト 兼 シニア・ストラテジストの金春愛氏が、①インド下院総選挙の影響、②「フラジャイル・5(脆弱な5通貨)」から新興国優等生への変貌、③インド株式が長期投資に相応しい理由──の3点について説明しました。

「2014年のモディ首相就任後、様々な構造改革を成し遂げたインドは『フラジャイル・5』から脱出しました。インド株式市場は2016年以降、8年連続で上昇し続けています。特に新型コロナウイルスによるパンデミックが落ち着いた2022年以降は米国株式S&P500を上回る上昇率を記録して世界から注目度が高まりました。最高値を更新中ですが、構造改革が実った結果であり、ファンダメンタルズの裏付けがある株価上昇のため、過熱感は見当たりません。そのため、中長期的な投資妙味は引き続き高いと言えます」(金氏)。

インドの株価指数とEPSの推移

政府が開発したUPIが電子決済市場をけん引

瀬上 貴裕氏大和アセットマネジメント
営業企画部 次長
瀬上 貴裕

第三部では、大和アセットマネジメント 営業企画部 次長の瀬上貴裕氏がインド出張報告と合わせて、投信販売関係者向けに「インド株式のアピールポイントに対する質問と回答例」を紹介しました。「10年前に訪問した際は現金主義だったインドが、現在はショッピングモール内のハンバーガーショップがすべてキャッシュレス決済に対応しているなど、想像以上にキャッシュレス化が進んでいました」と瀬上氏。こうした急速なキャッシュレス化は、インド政府主導で行われたと言います。

例えば、世界最大のデジタルIDプログラム「Aadhaar(アーダール)」は、2015年から普及し始めたインド版のマイナンバー制度です。生体認証システムを採用しており、顔や指紋、目の虹彩といった個人情報が登録されています。

「日本では本人確認の際に運転免許証などを提示することが一般的ですが、インドの自動車の普及率は9%にとどまっており、運転免許証はおろかこれまで本人確認書類を所有する人はほとんどいませんでした。ところが政府が身分を保証するアーダールの登場で、人々は携帯番号を持ったり銀行口座を開設できたりするようになりました。今では登録者数が13.7億人を超え、普及率は99%と乳幼児を除く全国民をカバーしています」(瀬上氏)

さらに、2016年にインド政府が開発したUPI(Unified Payments Interface、統合決済インターフェース)は、アーダール番号と携帯電話番号、決済用メールアドレスがあれば、スマホを利用して銀行口座間の即時送金を可能にしました。「日本ではキャッシュレス決済時にサービス提供者に合わせてアプリを起動してQRコードを読み込みますが、UPIは1つのアプリですべてのQRコードを読み込むことができるため、利便性が非常に高いです。UPIの登場によってキャッシュレス決済の利用は急拡大し、今では日常生活のほとんどのシーンでキャッシュレス決済が行われるようになりました」(瀬上氏)。このように、インドではキャッシュレスによる経済活動の効率化が個人の家計や企業の財務基盤の底上げにつながり、経済の発展に大きく貢献しています。

UPI決済数とデジタル決済に占める割合の推移

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