人生100年時代を充実させるためには、資産を増やすだけでなく、築いた資産をどう使うかという視点が重要になってくる。資産形成を終えた世代に向けて、資産の取り崩し(デキュムレーション)の重要性を発信するフィンウェル研究所代表の野尻哲史氏に、退職後のお金との向き合い方や、効果的な資産の取り崩し方法、金融機関が果たすべき役割などについて聞いた。(『保険マーケティングvol.25』2026年7月13日発行号より転載)
運用を継続しながら資産を取り崩していく

フィンウェル研究所代表
新NISA(少額投資非課税制度)のスタートや歴史的な株高を背景に、日本では資産運用への関心がかつてないほどに高まっています。それは非常に喜ばしい状況といえますが、金融の実務家である私たちが忘れてはいけないのは、顧客にとって資産運用は「手段」であり、「目的」ではないということ。退職後の生活に向けた顧客の希望は、「満足度の高い生活を送ること」です。そのために必要な資産残高は「目標」であり、その目標を実現するための「手段」が資産運用です。
生涯にわたるお金との向き合い方を登山に例えると、退職前後の人は、人生で最も資産残高が大きくなる山頂付近にいます。そこから先は資産を使っていく、いわば下山ルートに相当します。山は登る時よりも下りる時のほうが危険といわれますが、お金との向き合い方も同じです。緩やかな下山ルートを選び、運用を継続しながら資産をゆっくりと計画的に取り崩していく。退職を境に、資産形成の時代から、資産活用の時代へと意識を変えることが重要になってきます(図表①)。
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