低コストのインデックスファンドが人気です。資産形成はインデックスファンドだけ持っておけばよいのでしょうか?
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近年は個人投資家の間で、米国株を中心としたインデックスファンドへの投資が人気になっています。「アクティブファンドはインデックスファンドに勝てない」とも言われている中で、本当にインデックスファンドへの投資だけでよいのでしょうか。金融機関の窓口販売員がアクティブファンドをセールスしやすくなるようなポイントを解説します。

アクティブの中に”隠れパッシブ”が存在。きちんと選べばアクティブのリターンは高い

水田 孝信氏スパークス・アセット・マネジメント
運用調査本部
ファンドマネージャー
兼 上席研究員
水田 孝信

市場平均を上回るリターンの獲得を目指すアクティブファンド(以下、アクティブ)ですが、「アクティブはパッシブファンド(以下、パッシブ)よりリターンが劣る」という話を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。

実際に、アクティブとされる全てのファンドと、全てのパッシブのそれぞれのリターン平均を比較した2009年以前の学術研究においては、信託報酬などの運用手数料を差し引く前では両者のリターンは同程度で、アクティブのほうが手数料が高い分、手数料差し引き後のリターンが低くなるとされてきました(図表)。

【図表】アクティブとされるファンドとパッシブファンドの比較
アクティブとされるファンドとパッシブファンドの比較
出所:スパークス・アセット・マネジメント「優れたアクティブファンドはいろいろな忍耐強さを持っている」(水田孝信)

しかしながら、2009年の研究(※)ではアクティブとされるファンドの中に、手数料が高いにもかかわらず、保有銘柄がベンチマークとさほど変わらない“隠れパッシブ”が多数存在し、それらがアクティブとされるファンドの平均リターンを押し下げていたことが明らかになりました。つまり、きちんと選ぶことができれば、アクティブのほうがリターンは高いともいえます。

実は、長期的な資産の保全を目的とする年金基金などの間では、「アクティブが良いか、パッシブが良いか」という議論はほとんどされていません。基本的にはアクティブを保有したいけれども、調査に手が回らなかったり、運用資金が大きすぎたりするといった制約から、パッシブとアクティブの両方を保有しています。

機関投資家と異なり個人投資家は投資の目的や手法は自由です。資産を全てアクティブに投資可能というのは、ある意味恵まれていると言えるでしょう。

ただし、アクティブの中には“隠れパッシブ”が多いため、経済やビジネスについて勉強するなどファンドの選定には時間がかかります。リターン向上のために時間をかけたくない場合は、全てパッシブに投資するのも1つの選択肢。高リターンを目指し、勉強の機会と捉えてアクティブに投資するのも良いと考えます。

※Cremers, KJ Martijn and Petajisto, Antti, “How active is your fund manager? A new measure that predicts performance”, Review of Financial Studies, vol.22, no.9, p.3329-3365, 2009.
https://doi.org/10.1093/rfs/hhp057

■手数料控除後のリターンを考える

パッシブと比較して手数料が高い点がアクティブのデメリットとして挙げられることがあります。先述の通り“隠れパッシブ”を含むアクティブ全体の平均リターンとパッシブの平均リターンを比べると手数料分アクティブが負けるため、議論の的になるのでしょう。

しかし、投資家が享受するのは「手数料控除後のリターン」です。手数料の差よりも、実際にどれくらいリターンが出ているかが重要ではないでしょうか。“隠れパッシブ”ではない良いファンドに投資できれば、ベンチマークと大きく乖離した値動きになり、手数料の差以上のリターン創出を見込めます。手数料の高さそれ自体は必ずしもデメリットではないと言えます。

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