「ぜんぞう・十年十色シリーズ」には
成功体験の提供が不可欠だった

あおぞら投信
取締役会長 柳谷俊郎氏
──「ぜんぞう・十年十色シリーズ」のように、あらかじめゴールを設定したファンドを設定しようと考えたのは何故ですか。
柳谷1990年代と2000年頃、スイスで富裕層の資産運用コンサルタントを訪ねた際、彼らの顧客は、お金を持っているから豊かなのではない、人生をエンジョイしているから豊かなのであって、その裏側にあるのが資産運用だという話を聞いて、なるほどと思いました。
資産運用のために投資しているのではなく、人生を楽しむことを大切にしていて、そのために資産運用をしているのです。
当時の日本では一般的に、そうした視点で資産運用を捉えていなかった。潜在的には人生を楽しみたいと思っていても「元本割れのリスクを負ってまで、どうして資産運用をする必要があるのか」と考えるお客様も少なくありません。
そうしたお客様に、資産運用の必要性を知っていただき、一歩を踏み出していただくためには、わかりやすくシンプルで安心感のあるファンドを設定しなければならないと思いました。そのファンドを礎(いしずえ)にして、お客様が成功体験できなければ次につながらない。ですから、「ぜんぞう」には“失敗してはいけない資産運用”をめざして、できる限り近づけるというミッションがありました。
──そこでゴールベースアプローチのファンドをつくろうと。
柳谷そうですね。ただ、ゴールと一口に言っても、結婚や子育てに伴うイベントや老後の生活など、お金を必要とするポイントやタイミングはひとり一人違います。それを一律的に設定してファンドに落とし込むのは、お客様の現実にそぐわないと判断しました。
このため、ライフイベントに合わせるのではなく「いつまでに、どのくらい上昇するのか」という目標を設定することにしました。
定期預金のお客様の目線で
5年で15%上昇という目標設定
──具体的にはどのように設定にしたのですか。
柳谷「ぜんぞう」は5年で15%という目標を設定していて、これまではシリーズ25ファンド中19ファンドで目標基準価額である11,500円を達成しています(25ファンド中、5ファンドは2020年7月以降に設定したもの)。

──その数字だけ聞くと、着実に達成しているのは凄いなと率直に思いますが。
柳谷やはり、資産運用会社として、お客様が安心して預けられる場所を作ることが我々のミッションだと思います。長期投資での成功体験がないことが、貯金して守りに入ってしまうことの要因の一つです。一方で「人生を楽しむ」ためには、生きているうちにお金を使わなければ意味がありません。
資産運用をしていることで、資産が成長して、気持ちに余裕を持ってお金を使える。お客様にお金との良い距離感を持って付き合えるようになって欲しいと思って開発しました。
──「お金との距離感」とは考えさせられる言葉ですね。
柳谷お客様の感覚で考えることは大事だと思います。例えば「いつ、何を買って、いつ売れば良いのか」を自力で決めるのは、とても大変です。
このファンドを設定する過程で、ゴールまでの運用期間は10年だと長いだろうと思いました。それでは、どれくらいが適切なのか? その時に、5年の定期預金に預けているお客様が思い浮かび、やはり5年くらいで成果を出したいなと。目標とする上昇率も低金利を考えても年率1%、目標インフレ率を考えて2%では、預けようという気持ちにならないでしょう。世界経済の成長率が年率3%くらいですので、それくらいをめざせないかと考えました。そして、年率3%の上昇をめざすのなら株式投資で銘柄選択が重要なのかなと、何となく枠組みのイメージを固めていきました。
そんななかで出会ったのが「ぜんぞう・十年十色シリーズ」を運用している、ディメンショナル・ファンド・アドバイザーズでした。
──そうなんですね。このディメンショナルさんとの出会いは大きかったですか?
柳谷そうですね、大きいと思います。
(※第2回へ続く)