リーマンショック後は、1ドル=100円を下回るほどの円高基調に
「貿易統計(通関統計)と国際収支統計の貿易収支」では、国際収支統計のなかの「経常収支」とその構成要素について解説しました。日本の経常収支の構造は、2011年頃を境に大きく変化していることを取り上げています。
ではなぜ、経常黒字のけん引役は、貿易収支から第一次所得収支に変わったでしょうか。その背景には、リーマンショック後に進んだ円高と、それを受けた日本企業の生産戦略の転換があります。
かつての日本は、国内で生産した自動車や電子機器などのモノを海外に大量に輸出し、それによって貿易黒字を積み上げてきました。ところが、2008年のリーマンショックをきっかけに、世界の投資家のリスク回避姿勢が強まったことで円が買われ、ドル円相場は円高方向に進みました。特に2008年から2013年にかけては、ピーク時には1ドル=77円台をつけるなど100円を下回る円高基調が続きました。

出所:宅森昭吉氏への取材を基に編集部作成
円高になると、海外で商品を売った際、円に換算した売上は小さくなります。海外に輸出する日本企業にとって、円高は収益を圧迫する逆風になるのです。
こうした環境の下、日本企業は為替変動による収益悪化を避け、コスト競争力を確保するために、海外生産や海外投資を拡大していきました。海外生産が増えれば、日本国内から海外へ輸出する量は伸びにくくなります。つまり、円高は輸出企業の採算を悪化させただけでなく、企業の海外生産シフトを通じて、日本の貿易黒字が縮小しやすい構造をつくる一因となったわけです。
2012年末以降は「アベノミクス」への期待を背景に、円安方向へ
こうした変化が進むなかで、2011年、日本の貿易収支はついに赤字に転じました。直接的には、東日本大震災後のサプライチェーンの混乱による輸出の落ち込みや、原子力発電所の停止に伴う火力発電向け燃料輸入の増加、資源価格の上昇などが大きく影響しました。
もちろん、リーマンショック後の円高をきっかけに、日本企業の海外への生産拠点の移転が加速したことも赤字転落の要因の一つと言えるでしょう。半面、海外に移転した工場や、買収した現地企業などから得られる収益は増えていきました。これにより、日本の経常黒字を支える主役は、貿易収支から第一次所得収支へと移っていったのです。
2012年末以降は、第2次安倍晋三内閣の経済政策「アベノミクス」への期待を背景に、それまでの円高が修正され、円安方向に進みました。2016年、2017年の貿易収支は5兆円前後の黒字となりました。しかし、新型コロナウイルス禍による供給制約や、ウクライナ情勢にかかる資源高などが重なり、2022年以降は再び貿易赤字となりました。もっとも、2022年をピークに赤字幅は縮小しており、足元ではエネルギー価格の落ち着きなどが貿易収支の改善要因となっています。
「どの部分で稼いでいるか」が分かると、日本経済を立体的に捉えられる
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