株はずっと上がるもの
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投資信託の販売現場において、「なぜ今、日本株なのか」「なぜ長期投資なのか」という問いに的確に答えられるかどうかは、顧客との信頼関係を左右する。著書『株がずっと上がるもの』の著者であるマネックス証券 チーフ・ストラテジストの広木隆氏のインタビューをもとに、投信販売員が現場で使える5つの視点をまとめた。
広木 隆氏

広木 隆

マネックス証券 チーフ・ストラテジスト

1963年東京生まれ。上智大学外国語学部卒業。神戸大学大学院・経済学研究科・博士後期課程修了。博士(経済学)。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、社会構想大学院大学教授。大手証券会社、銀行系投資顧問、外資系運用会社など様々な金融機関でファンドマネージャー、ストラテジスト等を歴任。40年にわたって証券市場の最前線で働く。好きな言葉はロベルト・バッジョの「PKを外すことができるのは、PKを蹴る勇気のある者だけだ」。予想を外すかもしれない不安と戦いながら、今日もマーケットという名のピッチに立ち続ける。テレビ・ラジオのコメンテーターとしてメディアで活躍するほか、著書、論文、寄稿など多数。

日本株はなぜ今、上昇しているのでしょうか。

日本経済そのものが変わってきているからです。経済の変化が企業に波及し、その変化を投資家が評価した結果が株価上昇に表れていると思います。最も分かりやすい変化は、デフレからインフレへの転換です。

デフレは物価が下がり続けるため「待てば安くなる」という発想が広がり、消費も投資も停滞します。一方、インフレは歴史的にはむしろ常態であり、経済が回る前提条件です。

日本は長く「異常なデフレ状態」にあったと言えます。インフレへの転換により、企業行動も変わりました。現金をため込むだけでなく、配当や自社株買いなどの株主還元を強化し、資本効率を意識するようになっています。東証の市場改革も後押しとなり、JTC(ジャパン・トラディショナル・カンパニー)にも変化の兆しが見えています。これは一時的な要因ではなく、「構造変化」です。お客様には、相場の強さを景気循環ではなく、この構造の変化から説明するのが有効でしょう。

▶ 詳しくは書籍第2章「株は上がるようにできている理由」をご参照ください。

インフレ時代の企業選別に有効なROIC

インフレ時代に強い企業は、投資信託を選ぶ際にどう見極めればよいでしょうか。

キーワードは「価格決定力」です。原材料コストが上昇する中で、それを価格に転嫁できる企業は収益を維持・拡大できます。つまり「値上げできる企業が強い」ということです。

見極めるにはROIC(投下資本利益率)を活用します。ROE(自己資本比率)は負債を活用することで数値を高めることができますが、ROICは負債も含めた資本全体に対する収益性を測るため、本業の強さや資本配分能力がより明確に表れます。

実務的には、「ROEだけでは銘柄選択に使えない」というのは運用の世界では常識です。ROEとPBR(株価純資産倍率)の組み合わせや、ROICといった指標を併せて見ることが重要になります。

投信販売の現場では、「資本効率が高い企業」よりも「値上げできる企業に投資している」と言い換えるほうが、お客様には伝わりやすいでしょう。ROICを重視する傾向のあるクオリティ株ファンドを提案する際は、その定義や運用哲学の中身を一緒に確認することがポイントになります。

▶ 詳しくは書籍第7章「儲かる株の見つけ方」をご参照ください。

AI(人工知能)時代と資産形成はどう関係しますか。

AIの進展は「仕事を奪う」というより、「働き方を効率化する」と捉えるべきです。生産性が向上することで時間的余裕が生まれ、その時間を資産運用に充てることができる時代になります。

また、仕事で得た知見が投資のアイデアにつながるなど、労働と投資は相互に補完し合います。「労働か投資か」ではなく、「労働+投資」という発想が大切です。現役世代には、働いて得た収入を資産運用に回し、さらに成長させるという好循環を提案することが有効でしょう。

お客様に長期投資を続けてもらうための伝え方

長期投資の重要性を顧客にどう伝えればよいでしょうか。

まずこの本をプレゼントして読んでもらうのが一番です(笑)。「株は長期で上がるものだ」という前提を、お客様ご自身のペースで理解してもらう資料として活用いただけます。

「株は長期で上がるもの」の背景には3つの理由があります。第1にインフレ。お金の価値が下がることで、株や不動産などの資産価格は上昇します。第2に企業の利益成長。そして第3に、弱い企業が淘汰されて強い企業が残るという市場の仕組みです。

人類は太古から常に「今日より明日をより良くしよう」と進歩してきました。その積み重ねが、株価の長期上昇を支えています。この構造を共有できれば、短期的な変動に振り回されない投資行動につながります。個別銘柄ではなく市場全体に投資するインデックスファンドは、この成長の恩恵を効率的に取り組む手段です。投信販売員にとっても説明しやすいロジックと言えるでしょう。

世界株ファンドを持つ顧客に、日本株ファンドへの投資意義をどう伝えればよいでしょうか。

日本は長年のデフレという異常状態からようやく正常化しつつあり、企業の変革も進み、日本株はあらためて有望な投資対象となっています。日本人が日本株市場に投資することは、情報が得やすく理解しやすいというメリットもあります。

一方で、日本は災害リスクも抱えているため、世界株や他の資産との分散は不可欠です。「世界株ファンドに日本株も組み入れる」と提案することで、より堅固なポートフォリオ構築につながるでしょう。

▶ 詳しくは書籍第3章をご参照ください。

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