三井住友トラスト・アセットマネジメント 理事 商品開発業務部主管の浜田好浩氏は2022年11月、『実務必携 投資信託業務のすべて』を出版した。投資信託の仕組みや諸法令といった基礎的な知識、過去のヒット商品の栄枯盛衰、今後の投信業界で予想される変化などを網羅。掲載データも豊富なので、支店の販売担当者から本部関係者まで幅広く参考になる内容だ。

浜田 好浩氏
三井トラスト・アセットマネジメント
理事 商品開発業務部主管
浜田 好浩氏

銀行の商品採用担当者のひと言

『実務必携 投資信託業務のすべて』は単行本で276ページ。5章構成で、日本の投信の基礎知識から法令・制度・ルール、今後の業界の見通しまでカバーした内容となっている。

出版のきっかけは、浜田氏の取引先である大手銀行の商品採用担当者の次のひと言だった。「浜田さん、約6000本もある投信からいい商品をどのように見極めればよいかについてプロの目線で解説した本がないでしょうか。いやもっと言うと、この1冊で投信に関する必要な実務知識や知見が養われるような、そんな本があったらぜひ紹介してほしい」。

これを聞いて浜田氏はオンライン書店なども探したが見当たらなかったという。このような状態は、自身が投信業務に初めて携わった30年前とさして変わっていないと感じた。

「書店には投信の“入門書”の類があふれています。しかし、ほとんどは要約するに『長い期間で国際分散投資をしなさい。そのためにはコストが低いインデックス投信をドルコスト平均法で時間分散して買っていきなさい。相場が下がっても保有し続けなさい。慌てて売ってはいけません』というものです。もちろんそれはある意味正しい。でも、投信の世界はそんなに単純ではありません。そこで公募投信の現在、過去、未来に関する重要な知識を必要最低限に絞って、詳細かつ具体的に説明する書籍を出版することにしました」(浜田氏)

ヒット商品の誕生とその後

『実務必携 投資信託業務のすべて』は、まず第1章で“投資信託の基礎知識”を紹介している。世界の投信市場と日本との比較、日本の公募投信についてその商品分類や取引方法、コストなどを解説している。第2章では投信を取り巻く制度、規制などについて、第3章では投信商品の見極め方を運用戦略分類とパフォーマンス測定の観点から、それぞれ説明。「日本の投信はその制度やルールに独特のものがあります。なるべく枝葉末節にこだわることなく、重要かつ不可欠なものだけを抽出して詳説するように心がけました」(浜田氏)。

第Ⅰ章から第3章までが「投信の現在」とすると、第4章は「投信の過去、投信の歴史」との位置づけだ。日本の投信商品の多様さ豊富さは世界的にも類を見ないほどともいわれている。毎月分配型外国債券ブーム、通貨選択型投信、ESG関連ファンド、フロア確保型ファンド、元本確保型ファンド、目標払い出し型と予想分配金提示型投信などのヒット商品の仕組みに触れつつ、それらがなぜ生まれ流行り、一部は廃れていったのかを振り返る。

実務必携 投資信託業務のすべて
『実務必携 投資信託業務のすべて』(金融財政事情研究会・定価〈本体3000円+税〉)

対面・非対面の投信販売の将来

最後の第5章は、現在から推測される「投信の未来予想図」がテーマとなっている。現在世界の資産運用業界で起こっている潮流やETF(上場投資信託)、ロボットアドバイザー、ファンドラップなどのトピックのほか、証券会社や銀行などの対面・非対面による投信販売のポイントにも触れながら、将来日本の資産運用業界に起こる可能性や予測を記述している。

「今回の書籍では、投信がどのように生まれ、販売され、管理されているかという実態について、約30年にわたって実際に携わった自らの経験に即してまとめました。理念と実際のギャップや関係法人間の利害など、なるべくビジネスの現場に基づいた内容を盛り込んでいます。ぜひ投信の販売や運用といった資産運用ビジネスに従事する人や、将来資産運用に携わってみたいと考える学生など、様々な人に手をとっていただきたいです」(浜田氏)
 

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